ある日、気づいたことがある。
頑張ることと、上達することは、思ったより別の話だ。
これを言うと少し残酷に聞こえるかもしれない。でも20年以上マリンバを弾いて、何百人もの小学生を教えてきた結論として、これは本当のことだと思っている。
毎日2時間練習している子が、週3回しか練習しない子より下手なことがある。音楽の世界では、珍しくもなんともない話だ。
「最後まで通す」という、やさしい罠
小学生のマリンバ指導で一番多く目にするのが、「とにかく最後まで通す」練習だ。
気持ちはわかる。通せると達成感がある。お母さんにも聴かせやすい。「今日も頑張ったね」と言ってもらえる。
でもそれは、穴の開いたバケツに水を注ぎ続けているのに似ている。水は確かに注がれている。バケツは確かに動いている。でも、穴を塞がない限り、水は溜まらない。
そのまま最後まで弾く。
その練習は上達ではなく、
「崩れ方の反復」だ。
人間の体は、繰り返した動きを「正解」として覚える。間違った動きで100回練習すると、その間違いが100回分、骨の奥まで染み込んでいく。体はとても素直だ。嘘をつかない。あなたがやったことを、全部覚えている。
伸び悩む子に共通する、3つのこと
長年の指導で気づいたことがある。上達が止まっている子には、ほぼ例外なく共通するパターンがある。
1. 「音が出た」を「できた」と思っている
音は出ている。リズムも合っている。なのになぜか音楽に聞こえない——そういう演奏がある。
理由はシンプルだ。音を「叩いている」だけで、音楽を「奏でていない」。音色、力の流れ、フレーズの方向性。それらが揃って初めて音楽になる。音が出ること自体は、通過点に過ぎない。
2. 力んでいる、と自分では気づいていない
コンクール前になると、子どもたちは無意識に体を固める。不安が体に出る。すると音が固くなり、手が止まり、テンポが走り、ミスが増える。
面白いことに、速いパッセージで崩れる子の多くは「速く叩こう」としている。逆なのだ。力を抜ける子ほど、速く弾ける。緊張とスピードは、思ったほど仲が良くない。
3. 歌えないまま、弾いている
これが一番重要だと思っている。
レッスンでよく聞く。「そのフレーズ、歌える?」
歌えない子は、弾けていない。正確に言うと、音符を並べることはできるが、音楽を演奏することはできていない。歌えないフレーズは、体の中でまだ整理されていない。地図のない土地を、手探りで歩いているのと同じだ。
コンクールで結果を出す子が、必ずやっていること
結果を出す子には、一つ共通することがある。
弾く前に、歌う。
難しいパッセージを前にしたとき、いきなり楽器を持たない。まず口で歌う。リズムだけじゃない。音の流れ、強弱の意図、フレーズがどこへ向かっているのか——全部を声に乗せて表現できるようになってから、はじめて楽器を手にする。
「歌う」というのは、口を動かすことじゃない。そのフレーズに宿っているものを、体の外に出すことだ。それができると、演奏から「迷い」が消える。
今日から変えられる、4つのステップ
難しいことはなにもない。順番を変えるだけだ。
保護者の方へ——「頑張っているのに結果が出ない」は、親の方が苦しい
毎日練習している子どもを見ながら、結果が出ない日々が続く。そのつらさは、たぶん子ども本人より、見守る側の方が重い。「才能がないのかな」「先生を変えた方がいいのかな」。そんなことが頭をよぎる夜もあるだろう。
でも、多くの場合、問題は才能でも練習量でもない。整理の仕方がわかっていないだけだ。正しい視点を一つ持てるだけで、急に変わり始める子を、何人も見てきた。
「伸びない子」はいない。変わるきっかけが、まだ見つかっていないだけだ。
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石原慎之助マリンバスクール|神奈川県川崎市栗平